あらすじ
幼い頃から、織田信人はいつも近くにいた。
家が近く、自然と言葉を交わし、気づけば隣にいるのが当たり前になっていた幼なじみ。
優しくて、まっすぐで、ときどき無神経なくらい正直な信人に、出光千愛は何度も心を揺らされてきた。
大人になるにつれて、その想いは少しずつ恋へと変わっていく。
それなのに、好きになればなるほど、胸の奥に小さな痛みが走る。
なぜか素直になれない。
なぜか心のどこかで、彼を許せないような気持ちが生まれてしまう。
子どもの頃は気づかなかった。
親同士は会えば会釈をするのに、どこかよそよそしく、微妙に気まずい空気をまとっていたことを――。
そしてある日、千愛は家の奥にしまわれていた古い記録を見つける。
そこに眠っていたのは、出光家が長い年月のあいだ隠し続けてきた、ある過去だった。
好きなのに、許せない。
許せないのに、離れられない。
幼なじみとして始まった二人の恋は、やがて家に刻まれた歴史と、親世代の叶わなかった想いまでも巻き込みながら、静かに運命を変えていく――。