あらすじ
三年間、瀬川凛は笑い続けた。
誕生日のディナーを予約しても、記念日にプレゼントを用意しても——彼氏の柊悠樹は、幼馴染の水瀬奈々からLINEが届くたびに、「すぐ戻る」と言って消えた。
戻ってくるのは、いつも二〜三時間後。
「大丈夫だよ、気にしないで」
凛はそう言い続けた。ただし——スマホのメモには、全部記録していた。
日付、時刻、状況。感情は一切書かなかった。ただ、事実だけを。
三年分の記録が積み重なったころ、悠樹は言った。
「奈々と付き合いたい。別れよう」
凛は静かに微笑んで、答えた。
「——わかった」
そしてその翌週、悠樹の会社のライバル企業への転職が決まった。
内定通知は、別れ話の一ヶ月前に届いていた。
泣かなかったのは、強かったからじゃない。
ずっと、準備していたからだ。