あらすじ
辺境伯に嫁いで五年。精霊契約者のセレスティーヌは薬草園を蘇らせ、孤児院を再建し、隣領との取引路を築いた。けれどその全ては、夫の親友ジークの名前で報告されていた。
「奥方にもご協力いただきました」――協力。たった二文字で、五年分の仕事が消える。白い結婚の条項が満了した日、セレスティーヌは引き継ぎノートを三冊残して去った。
翌朝、ジークがそのノートを暖炉に放り込んだことを、使用人長だけが知っていた。
王都の薬学ギルドで「自分の名前」を取り戻し始めた頃、辺境伯領では薬草園の花が枯れ、精霊が沈黙し、ジークの虚構が崩れ始める。