あらすじ
休日の月見坂市新市街。サクタロウが私服姿で付き合わされていた高級百貨店『聖羅』の催事場で、突如として悲鳴が響き渡る。
華やかな『名家秘蔵・雛人形展』の最奥――厳重なセキュリティに守られた展示ケースの中で、数千万の価値を持つとされる名門・藤堂家秘蔵の『お内裏様』の首が、鋭利な刃物で無残に切り落とされていた。
パニックに陥る周囲をよそに、ヴィクトリアン・ドレスに身を包んだ如月瑠璃は、懐中時計の秒針で己の思考を調律し、静かに現場へと歩み寄る。純白の手袋と銀のルーペが捉えたのは、人形の首の『断面』に残された微細な痕跡と、繊維の潰れ方だった。
「これは盗難ではない。この場での処刑じゃ」
なぜ犯人は、高価な美術品を盗み出すのではなく、わざわざ強固な警備を掻い潜ってまで『首を断つ』という異常な行動に出たのか?
切り裂かれた絹の衣、古い木材の断面、そして人形の内部に隠された物理的な矛盾。残された痕跡だけを頼りに、瑠璃は没落した旧家・藤堂家がひた隠しにしてきた呪わしき歴史へと論理のメスを入れる。
情動を解さない天才令嬢が、一切の錯覚やオカルトを排した『物理的観察眼』のみで解体していく、凄惨な血脈の真実とは――。
オムニバス形式で綴る、如月令嬢シリーズ第13弾!