あらすじ
ベルンスゴーダ子爵家の長女リディアは、地味で愛想がないという理由で軽んじられながらも、家の帳簿、使用人の采配、贈答の手配、さらには婚約先であるローゼンベルク伯爵家との調整まで、一人で支えてきた。
けれど夜会の日、父と婚約者に告げられる。
伯爵家にふさわしいのは、おまえではなく妹セシリアだ――と。
「聞き分けのいい長女」として、すべてを飲み込んできたリディアは、その言葉にようやく頷かなかった。
婚約契約、取引記録、帳簿の控えを整理し、彼女は静かに家を出る。
その翌日から、ベルンスゴーダ家とローゼンベルク家は目に見えて狂い始めた。
贈答の手違い、支払いの遅延、使用人たちの混乱――今まで当然のように回っていたものは、すべてリディアが一人で整えていたものだったのだ。
行き場を失ったリディアを拾ったのは、善良だが不器用な公爵家当主代理、クラウス・フォン・オルデンブルク。
彼だけは、リディアを「都合のいい長女」ではなく、正当な対価を払うべき有能な人材として扱った。
これは、便利な長女として使い潰されてきた令嬢が、奪われた婚約の代わりに、自分の名と居場所を取り戻していく物語。