あらすじ

【類まれな頭脳と「女顔」を持つ少年】 主人公・十王聖那(じゅうおう せな)は、一度見たものを忘れない驚異的な記憶力の持ち主である。幼少期、その才能に目をつけた父親から一日八時間の猛勉強を強いられる過酷な日々を送った。フィンランド人の父譲りの金髪碧眼と、女子に間違われるほどの端麗な「女顔」を持つ彼は、周囲からの好奇の視線にさらされながら成長する。中学一年の時に父を事故で亡くし、現在は一人暮らしをしながら、県内屈指の進学校「ヤマ高」へと首席で入学した。 【運命の出会いと親友としての絆】 入学式当日、聖那は後ろの席に座っていた少年・神峰亜希(かみね あき)と最悪で最高の出会いを果たす。ミケランジェロの彫刻のごとき美男子である亜希は、入試二位の実力者だった。不遜な態度を見せる聖那に対し、亜希は呆れながらも世話を焼き、二人はいつしか「親友」として無二の絆を築いていく。聖那にとって亜希は、自分を好奇の目から守ってくれる「抗生物質」や「虫除け」のような存在であり、二人の関係はどこか喜劇的で、永遠に続くかのように思われた。 【夏祭りの夜、崩れ去る関係】 高校生活最初の夏休み、二人は浴衣姿で夏祭りへと繰り出す。人混みの中ではぐれた聖那を助け出し、鼻緒擦れをした足に丁寧に絆創膏を貼ってくれる亜希の優しさに、聖那は微かな照れ臭さを感じる。しかし、この夜を境に二人の関係は劇的な変貌を遂げる。聖那が「友情」だと信じて疑わなかった時間の裏側で、亜希は聖那に対して、友愛を募らせていたのだ。ついに感情を抑えきれなくなった亜希は、聖那を力ずくで引き寄せ、「聖那が他の奴のものになるなんて許さない」と、これまで隠していた剥き出しの情愛と狂気を突きつける。二人が築いてきた「二千ピースのジグソーパズル」のような完璧な関係は、一瞬にして崩壊した。 【拒絶と沈黙、そして再生への予兆】 事件の後、亜希は聖那を徹底的に避けるようになる。教室では席を替え、お揃いで付けていたはずのピアスも外された。聖那は自分の無神経さが亜希を苦しめていたことに気づき、深い喪失感と後悔に打ちひしがれる。 食事も喉を通らず、心身ともに衰弱した聖那は体育の授業中に倒れてしまうが、保健室の枕元には、聖那の好みを完璧に把握した「激辛カレー」が置かれていた。それは、言葉を交わさずとも消えることのない亜希の不器用な献身の証だった。 【結末:走り出す勇気】 自責の念に駆られながらも、聖那は「亜希を失いたくない」という切実な願いを再確認する。自分の気持ちの正体はまだ判然としないが、今度は自分が亜希を探し、見つけ出す番だと決意する。雨上がりの帰路、前を行く亜希の背中は遠いが、聖那は脱ぎ捨てた下駄の代わりに、新たな一歩を踏み出そうとする。喜劇でも悲劇でもない、二人だけの「ただの、くだらない恋の話」を、再び繋ぎ合わせるために。

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カクヨム
カクヨム2026/03/25
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