あらすじ
「君の小説には、読者が求めるカタルシスがない」
担当編集者のその一言が、駆け出しの小説家である「私」の心を殺した。
読者が求めるのは、最初から無双し、ストレスフリーで心地よい夢を見せてくれる流行りの「テンプレ」展開。泥臭く足掻き、無様に敗北する人間の姿を描きたいという私の願いは「展開が遅い」と切り捨てられ、誰にも読まれずにランキングの底へと沈んでいく。
流行りに魂を売るくらいなら、いっそ筆を折ってしまおうか。
絶望と共に冷たい夜の雨の中を歩いていた私は、見知らぬ路地裏で一軒の奇妙な店に迷い込む。
『物語骨格修理・調整――テンプレート直します』
そこにいた初老の男は、「起承転結」や「追放」「チート」といった概念を物理的な歯車として修理する、物語骨格の職人だった。
「テンプレなんて小説を腐らせる毒だ」と吐き捨てる私に、男は無数の原稿が風に舞う「小説の墓場」を見せ、テンプレが持つ“本当の役割”を静かに語り始める。
なぜ、物語には型が必要なのか。
そして、この不思議な老人の正体と、彼がかつて物語を紡いだ「本当の理由」とは――。
評価されずに理想と現実の間で足掻く、すべての創作者の胸に突き刺さる魂の再生の物語。