あらすじ
没落男爵家の末娘エルザの唯一の取り柄は、祖母から受け継いだ薬草の知識だった。
兄に搾取され、兄嫁に形見を壊され、それでも庭の薬草を育て続けていた。
ある日、薬師組合への問い合わせの宛先を間違えた。
届いた返事は、見知らぬ相手からの丁寧すぎる薬草指南。
便箋三枚にびっしりと書かれた専門知識と、一枚の冬薔薇の押し花。
文通は続いた。手紙を重ねるたびに、追伸が長くなっていく。
同封される押し花の種類が変わっていく。
その花に込められた意味を、エルザはまだ知らない。
相手の正体が辺境伯だと知った時、全てが変わった。
あの丁寧な文面も、不器用な追伸も、選び抜かれた花も。
実力で勝ち取った居場所と、手紙の向こうにいた人の本当の顔。
返事がだんだん甘くなっているのは、気のせいだろうか。