あらすじ
始まりは、ほんの些細な違和感だった。胸の奥に、針の先ほどの小さな引っかかりが生まれた。次いで、冷たく小さな嫌な予感がじわりと広がっていった。
踵を返すほどでもなければ、足を止めるほどでもない。だが確かに、背骨をなぞられるような、そんな微細なざわつきが。
「……おい」
しかし、その予感は見事に的中してしまった。
夜、スーパーからの帰り道。街灯はまばらで、ひっそりとした住宅街。前方から歩いてきた男が、なぜかおれの進行方向へと身を寄せてきたのだ。
おれはすっと右側へ寄った。すると、男も同じように右へ寄った。左へ寄ると、男もまた左へ。
妙だなと思いつつ、おれはそのまま歩き続けた。やがて距離が縮まり、すれ違うかというところで男はぴたりと足を止めた。そして、ポケットから何かを取り出した。