あらすじ
王国の社交界で“天然の令嬢”として知られるセレフィーナ。
彼女は空気を読まず、計算もできず、権力争いにも興味がない。ただ花を愛で、誰にでも優しく接するだけの少女だった。
しかし王都では近年、不可解な出来事が続いていた。政治的な陰謀、貴族同士の対立、そして王国の制度そのものを揺るがす異常な事件。王子はそれらの裏に何か大きな仕組みがあることを感じ取り、調査を進めていく。
やがて明らかになる衝撃の事実。
この世界は“管理された物語世界”であり、人々の運命や政治の流れは見えないシステムによって調整されていたのだった。
その中心にいたのが――セレフィーナ。
彼女は世界を安定させる“ヒロイン存在”。
だがその人格は、あまりにも予測不能で天然すぎたため、管理システムは物語を正常に進行させられなくなっていた。制度や政治の異常、権力闘争の歪み、そして世界の揺らぎはすべて、彼女の存在による“物語の不整合”が原因だった。
管理側はついに決断する。
ヒロインを削除し、世界を再生成すること。
だが王子はその計画を前にして、理解も納得もしないまま、ただ一つの結論を出す。
「理解しない」
その言葉によってシステムは判断不能となり、世界の終了処理は停止する。エンディングが確定しないまま、世界は“未完成の状態”で存続することになった。
やがて世界は再び日常を取り戻す。
王都では復興が進み、人々は平穏な生活を続けていく。
そして王城の庭園で、セレフィーナは咲いた花を見て微笑む。
「今年の花、よく咲くわね」
隣で王子は静かに答える。
「……ああ」
世界を動かしていたのは、陰謀でも運命でもない。
勇者でも王でもない。
ただ花を綺麗だと笑う――
一人の天然の少女だった。
物語は終わらない。
世界は、理由も分からないまま続いていく。