あらすじ
人は、己の運命を選んでこの世に生を受けることはできない。
もし、この世に、一切の組織的庇護もなく、幸運の欠片も落ちていない、ただ「絶望」という名の焦土から這い上がった「真の努力の象徴」を求めるならば、我々はその視線を広大な中国大陸、かつての大明帝国へと向けるべきであろう。
そこには、父母兄弟を飢えで失い、住む家を追われ、三年に及ぶ托鉢放浪の中で泥水を啜り、文字通り「地の底」を這いずり回った男がいる。その名は朱元璋(しゅげんしょう)。後に一億の民を統べ、三百年続く帝国の礎を築いた太祖洪武帝である。
彼が直面した逆境は、現代の我々が想像しうる「不遇」という言葉では到底言い表せぬほどに苛烈であった。彼の人生は、今この瞬間に困難に直面し、自分の運命を呪いたくなるような人々にとって、最も残酷でありながら、最も眩い「希望の灯火」となるはずだ。