あらすじ
時空の歪みによって、異界「歪都」へと迷い込んだ軍人・朝霧朔。
そこは、桜が絶えず散り続け、未練や後悔が形を成した異形が跋扈する、現実とは異なる都だった。
元の世界へ帰還する術を探す中で、朔は一人の男と出会う。
名は黒瀬紫苑。
よれた着物に身を包み、軽薄な言動とは裏腹に、どこか底知れぬ影を背負う浪士。
価値観も、生き方も、何もかもが対極にある二人は、互いに反発しながらも、この歪んだ都を生き抜くため、不本意な共闘を余儀なくされる。
やがて朔は、紫苑の抱える過去と、その深い闇の一端に触れることになるが——紫苑は決してその内側を明かそうとはしなかった。
桜の下、刃を交え、時を重ねる中で、二人の距離はわずかに変化していく。
しかし、訪れる帰還の刻。
開かれる門は、ただ一人しか通すことを許されない。
守るべきものを持つ者と、すでにすべてを失った者。
選ばれるべきは、どちらか。
そして——
桜は、散る。
帰らぬものを、残したまま。