あらすじ
三年前、冤罪で伯爵家を潰され、両親を奪われたフィーネ・アシュベルは、死んだことにされた。
生き延びた彼女は黒百合亭で変装と諜報を叩き込まれ、侍女、占い師、薬師、令嬢、商人の娘、修道女――七つの顔を使い分けて王宮へ舞い戻る。
目的はただ一つ。
家族を陥れた宰相の罪を暴き、アシュベル家の名を取り戻すこと。
病弱な国王の陰で怯える王女。
薬務室に隠された毒の記録。
港へ流れる裏金。
そして王家さえ巻き込む密約と、偽りの御璽。
仮面を重ねるほど、フィーネは三年前の真実と国家規模の陰謀へ近づいていく。
けれど、彼女にはたった一つの誤算があった。
近衛騎士団長アルジェ・ヴァイス――“氷の騎士”。
顔も、声も、名前も変えたはずなのに、彼だけがフィーネを足音で見抜き、捕らえる代わりにこう言った。
「お前が何を追っているのか、知りたい」
敵であるはずの男は、なぜ彼女に手を差し伸べるのか。
復讐だけを支えに生きてきた少女は、後戻りできない真実へ踏み込んでいく。
正体を隠す少女と、唯一その素顔を見失わない騎士が紡ぐ、宮廷恋愛ファンタジー。