あらすじ

プロローグ 『箱の中のワンピース』 そのロリータワンピースは、 一度も着られないまま、箱の中で眠っていた。 淡いピンクの生地。 指先で触れると、さらりとした布の感触が伝わる。 胸元には小さなリボン。 裾には幾重にも重なるフリル。 繊細なレースは、光を受けて柔らかく輝いていた。 ——大好きだった。 画面越しにこの服を見つけたとき、 胸がぎゅっと締めつけられたのを覚えている。 可愛い。 本当に、可愛い。 「……買っちゃった」 あのときの私は、少しだけ勇気を出していた。 届いた箱を開けた瞬間、 胸がどきどきして、 思わず笑ってしまったくらいだ。 けれど—— 結局、私は一度も袖を通さなかった。 似合わないかもしれない。 年齢的に痛いと思われるかもしれない。 周りに笑われたらどうしよう。 そんな言い訳を、ひとつずつ積み上げて。 気がつけば、 ワンピースは箱の中にしまわれたままだった。 「……ほんと、意気地なし」 ぽつりと呟く。 社会人になってからも、 忙しいから。 体型が気になるから。 もう若くないから。 理由はいくらでも作れた。 ——本当は、ただ怖かっただけなのに。 もう一度、ワンピースを見る。 ふわりと広がるスカート。 可愛らしいリボン。 私が本当は着たかった服。 「……可愛いなあ」 思わず、そう呟く。 もし。 もし、もう一度やり直せるなら。 もし、誰の目も気にしなくていい場所があるなら。 そのときはきっと—— 私は、絶対に着る。 箱のふたを、そっと閉じた。 そのときはまだ、 この願いが 本当に叶うことになるとは 思ってもいなかった。

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小説を読もう2026/03/24
  • 現在の作品私が着られなかったロリータ服を、異世界で広めます。 ―転生令嬢のドレス革命―