あらすじ
「……帰って寝たい(震え声)」
「……そうか。敵の補給路を断てという暗示か(感涙)」
アルスは悩んでいた。
彼はただの、極度のビビりな青年である。人里離れた『死の森』で穴を掘って隠居しようとしただけなのだ。
しかし、彼の「虚弱体質」は周囲には「圧倒的な魔圧」に見え、
彼の「震える逃走」は「次元を縮める縮地」と誤解され、
彼の「ただのくしゃみ」は「伝説の爆裂魔法」として魔導要塞を粉砕してしまった。
必死に謝れば「慈悲深い神の託宣」と崇められ、
怖くて黙り込めば「深淵なる知略の沈黙」と戦慄される。
勘違いした聖女は教団を挙げて彼を神格化し、
挑んできた魔王令嬢は一瞬で(転んだ拍子に)返り討ちにされ、重すぎる愛を誓う始末。
「私はただの人間なんです!」
「左様でございますな、主様。……主様という唯一無二の概念に比べれば、人間などという枠組みはあまりに矮小にございます(狂信)」
本人の絶望をよそに、世界が勝手にひれ伏していく。
逃げれば逃げるほど英雄にされてしまう、不本意極まる覇道コメディ、ここに開幕!