あらすじ
「異世界の魔法は、バグだらけの欠陥言語だった」
現代日本で言語学者をしていたレンは、ある日、魔法が衰退し、滅びを待つばかりの異世界へと転生する。
そこで彼が目にしたのは、誰も意味を理解せず「ただの呪文」として唱えられている、非効率な魔法の数々だった。
レンはその魔法の正体が、高度に抽象化された**『記述言語(ソースコード)』**であることを瞬時に見抜く。
「構文(シンタックス)が間違っている。無駄な修飾語を削れば、出力は三二倍になるぞ」
圧倒的な知性で世界を再定義し、最強の『翻訳官(トランスレイター)』として名を馳せるレン。
しかし、神の領域に触れる魔法には、残酷なシステム制約が存在した。
【代償:実行リソースとして、術者の「記憶」を消去する】
最強の魔法を放つたび、レンの中から「現代日本の思い出」が、そして「この世界で得た絆」が零れ落ちていく。
――昨日食べた料理。親友との約束。そして、愛する人の名前。
彼を支えるのは、彼に恋をし、彼に忘れ去られる運命を受け入れた銀髪の騎士・ステラ。
「貴方が忘れても、私が覚えています。……貴方のすべてを、私が日記に綴ります」
これは、自分を削りながら世界を綴り直す、不完全な男の英雄譚。