あらすじ
もし、人の「選択」が都市の形を変えているとしたら――。
ある日、澪は不思議な都市を目にする。
それは現実と重なりながら存在する、誰にも知られていないもう一つの街だった。
その都市の名は――エデン。
円形の街の中心には広場があり、その周囲には七つの塔が立っている。
白、赤、青、緑、黄、紫、そして黒。
それぞれの塔は、人の心や感情、そして「選択」を象徴するかのように静かに存在していた。
この都市では、人々は迷い、決断し、立ち止まりながら生きている。
怒り、希望、恐れ、後悔。
そうした感情の揺れが、街の流れや空気をわずかに変えていく。
そして澪だけが、その変化を「観測」できた。
人が選ぶたびに、都市の道は増え、重なり、消えていく。
見えないはずの分岐が、澪の視界には線となって現れる。
まるでこの都市そのものが、人間の選択を記録する巨大な装置のようだった。
エデンを案内するのは、ユキという存在だった。
ユキはこの都市の仕組みを知っているようでいて、すべてを語ることはない。
ただ一つだけ、澪に告げる。
「この都市は、選択でできている」
迷う人、急ぐ人、立ち止まる人。
都市の流れは、人の心とともに変化する。
そして七つの塔は、その均衡を静かに保っていた。
しかしあるとき、都市の空気が変わり始める。
人々の動きが乱れ、分岐の線は増え続け、
街は巨大な迷路のように複雑になっていく。
その中心に現れたのは、黒い塔だった。
黒塔――停止の塔。
それは恐怖ではなく、むしろ穏やかな静けさをもたらす存在だった。
何も決めなくていい場所。
迷わなくていい場所。
すべてを止めてしまうような誘惑。
人々は立ち止まり、都市の流れはゆっくりと鈍っていく。
選択をやめたとき、都市はどうなるのか。
そしてなぜ、澪だけがこの都市を観測できるのか。
エデンはただの街ではない。
それは、人間の心と運命が交差する場所だった。
これは、運命を観測する物語。
そして――人が「選ぶ」ということの意味を問う物語である。