あらすじ
フランセ王国の名門・シャンゼル学院の卒業式。華やかな祝福の場で、リヨン伯爵家三男マークス=リヨンは、婚約者イライザ=マルセイユに突然の裏切りを突きつけられる。理由はあまりにも単純――「顔と爵位が上だから」。彼女は侯爵家三男アクワーへと乗り換え、マークスはあっさりと婚約破棄を受け入れる。だがその冷静さの裏には、前世でブラック企業に酷使されてきた苦い記憶があった。努力が報われない現実を知る彼は、もう他人のために尽くすことをやめると決意する。
実はマークスは、婚約者の家であるマルセイユ伯爵家の財政を陰で立て直してきた立役者だった。無駄を削減し、流通を改善し、帳簿を整え――その功績は誰にも正しく評価されないまま、すべて失われたかに思えた。しかし彼は気づく。「自分の努力は、自分のものだ」と。
婚約破棄から一か月後、父の命で新たな縁談が持ち込まれる。相手は王国有数の大貴族・ニース侯爵家の一人娘、マーガレット。だが彼女には“呪い姫”という不名誉な異名があった。顔に刻まれた呪いの紋様のせいで、これまで誰からも敬遠されてきたのだ。
利害だけで結ばれるはずの新たな婚約。しかしマークスは、彼女の呪いすらも合理的に受け入れる。感情に流されず、冷静に価値を見極めるその姿勢は、これまでの貴族たちとは明らかに異なっていた。
これは、裏切りによってすべてを失った男が、自らの力で価値を証明し、真に報われる人生を掴み取る物語。捨てられたはずの男が、やがて世界を動かす存在へと変わっていく――その第一歩が、今始まる。