あらすじ
「君の作るワインは、君そのものだ。――地味で、退屈で、何の印象も残らない」
王都屈指の商家の次男であり、婚約者だったジュリアンから放たれた無慈悲な言葉。リゼット・ヴァレールは、名門醸造家の名に泥を塗られたまま、一方的に婚約を破棄され、着の身着のままで王都を追放される。
行き着いた先は、亡き父が遺した、蔦の絡まる古びた醸造所。
一人静かに、流行に媚びない「真実の味」を追い求めようと決意したリゼットだったが、ある嵐の夜、傷ついた一人の騎士が現れる。
彼の名はエドガール・ラングレー。
王国の盾と謳われる冷徹な騎士団長である彼は、リゼットが差し出した「地味なはずの一杯」を口にした瞬間、その瞳に熱い光を宿した。
「……探していたのは、この味だ。そして、あなたという女性(ひと)だ」