あらすじ
エルディス王国の若き魔法騎士団長、ルクレツィア。没落寸前だった彼女の家門は、ここ数年で数々の武功を挙げ、栄華の極みに達していた。
そんな天才と名高い彼女の隣には、常に一人の男が控えている。名をゼーレン。魔力を持たず、これといった才能もない平民の入り婿である。
「私の実力に、無能な夫は相応しくない」
ついに頂点へ上り詰めたルクレツィアは、かつて死の淵にあった彼を救った過去の「恩」はとうに返してもらったと言い放ち、ゼーレンに離縁と追放を突きつけた。
妻からの冷遇、周囲からの嘲笑。すべてを失ったかのように見えるゼーレンだったが、彼は一切取り乱すことなく、ただ静かにそれを受け入れた。
「……そうか。これでようやく、恩は返しきったな」
彼が去った後、ルクレツィアはまだ気づいていなかった。彼女の輝かしい栄光の裏側に、常に「見えざる手」が働いていたことに。
そして、追放された無能な夫が、かつて王国はおろか大陸全土を震え上がらせた『絶世の存在』であったことに――。
これは、一つの恩返しを終え、呪縛から解き放たれた男が、真の姿を取り戻して世界を蹂躙するまでの軌跡。