あらすじ
「お前のような血も涙もない女との婚約は、今日この場をもって破棄させてもらう!」
王立学園の卒業パーティー。
シャンデリアが眩しく輝く広間で、王太子殿下が声高に宣言した。
彼の腕の中には、涙ぐんで震える男爵令嬢の姿がある。
周囲の貴族たちはざわめき、私——公爵令嬢のエレノア——を冷たい目で見つめていた。
私は侍女に合図し、用意していた分厚い羊皮紙の束を受け取った。
「本婚約は王家と公爵家の『契約』に基づいております。殿下からの『一方的な破棄』かつ『不貞行為』が原因となりますので、こちらの違約金請求書をご確認ください」
「……は?」
「また、本件に関する情報漏洩を防ぐための秘密保持契約書(NDA)もご用意しております。ここにサインをお願いいたします」
王太子の顔が引きつる。
私は冷静に、淡々と事務手続きを進める。
愛だの恋だの、そんな曖昧なもので私は動かない。
法律と契約こそが、この世界で最も確実な武器なのだから。