あらすじ
その日、私はただ…迷子になっていた少女に声を掛けただけだった。
「....どうしたの?お父さんかお母さんは一緒じゃないの?」
声を掛けられた少女は私のほうをじっと見ていた。
綺麗なドレス、整えられた髪。どう見ても貴族の子供にしか見えない。
けれど少女の瞳は、どこか戸惑っているようにも見えた。
「どうして…?」
小さくこぼれた声に、私は首をかしげる。
「え?」
「どうして、私に声を掛けてくださったの?」
その言葉に、思わず瞬きをした。
「だって、困ってそうだったから」
そう答えると、少女は息を吞んだように固まった。
「....変な人」
ぽつりとそう言いながらも、彼女はここに来た目的を答えてくれた。
その少女は少しだけ震えていた。
その時の私は、何も知らなかった。
目の前にいる少女が、やがて”悪役令嬢”と呼ばれることも。
そして、このほんの一瞬の出来事がすべてを変えてしまうことになるなんて。