あらすじ
文明開化の帝都――……。
壱木漣太朗(いちき・れんたろう)は十年前の御一新で特権を失い、その日暮らしの人力俥夫として生きるもと武士だ。
とある体質のために仕事もうまくいかず、果ては家賃を滞納し、首が回らなくなっていたある黄昏時のこと、彼は現世と幽世の〈狭間の道〉へと迷い込んでしまう。
そこで出会ったのは、俥に乗せてほしいとねだる、息を呑むほど美しい少年・汀(みぎわ)だった。
「僕の足代わりが漣の仕事。よろしくね」
彼の正体は、陸を歩くための足を持たない人魚のあやかし。
御一新ののち、現世で居場所を失ったあやかしたちを幽世へ逃がす仕事の責任者だという汀は、漣太朗を自身の専属俥夫として雇い入れる。
口が悪く不器用な漣太朗と、ワガママでミステリアスな汀。
反発し合い、常に憎まれ口を叩き合う二人だったが、あやかしを救うために帝都を駆けるうち、種族を超えた奇妙な絆を育んでいく。
しかし、幽世へあやかしを帰す閏日が迫るなか、汀が漣太朗にある重大な秘密を隠していたことが判明し――……?
これは、時代に取り残された没落俥夫と、幽世の水底からやってきた美しき少年人魚――……互いの欠落を埋め合う、明治あやかしバディ譚。