あらすじ
■説明文
幻想郷――それは、常識と非常識の境界に存在する、歪みを内包した世界。
人と妖怪が共存し、数多の異変が日常のように発生するその地において、ある日、誰にも知られぬ“異常”が落ちてきた。
空から。
それはまるで、世界そのものに拒絶されたかのように。
全身を血に染め、意識を失った一人の存在。
その姿は人間に近い。だが決定的に何かが違っていた。
それを発見したのは博麗神社の巫女。
異変解決の帰路についた彼女は、終わったはずの違和感の“続き”に触れることになる。
その存在は生きていた。
だが、その気配は不安定で、まるで“そこにいないもの”を触れているかのような奇妙な感覚を伴っていた。
名前も、過去も、すべてを失ったその人物に残されていたのは――ただ一つ。
「ワイト」という名だけだった。
だが、それすらも本物なのかは分からない。
なぜ彼は空から落ちてきたのか。
なぜ記憶を失っているのか。
そして何より――なぜ“存在が歪んでいる”のか。
やがて明らかになるのは、幻想郷全体を蝕む“軸の歪み”という異変。
それは単なる空間の乱れではない。
時間、存在、記憶、境界――あらゆるものの“基準”が崩れ始めている現象。
過去と未来が交錯し、在るべきものが消え、在らざるものが現れる。
世界そのものが、ゆっくりと“正しさ”を失っていく。
ワイトは、その歪みの中心にいる存在だった。
彼は「原因」なのか。
それとも「被害者」なのか。
そして、世界は彼を受け入れるのか――それとも、排除するのか。
博麗の巫女は選択を迫られる。
異変を解決するということは、必ずしも“誰かを救うこと”ではない。
時にそれは、“誰かを消すこと”を意味する。
一方で、彼と関わる者たちもまた、変化していく。
最初はただの“得体の知れない存在”として扱われていたワイト。
だが、共に時間を過ごす中で、その空白の中にわずかな人間性が見え始める。
無垢で、不完全で、どこか儚いその姿。
言葉を覚え、感情を知り、世界を理解していく過程で、彼は少しずつ“存在”を取り戻していく。
そして――
時が流れに連れ、キャラたちは主人公に恋に落ちる。
それは唐突なものではない。
日常の中で積み重なった、些細なやり取り。
不器用な優しさ。
守ろうとする意志。
“消えてしまうかもしれない存在”だからこそ、強く惹かれていく想い。
だがその感情は、同時に残酷でもある。
なぜなら――
ワイトの存在は、この世界にとって“正しくないもの”だからだ。
軸の歪みが進行するほどに、彼の存在は不安定になっていく。
輪郭は曖昧になり、記憶はさらに欠け、ついには“消失”の危機に瀕する。
守るべきか。
消すべきか。
その選択は、世界か、個か。
正しさか、想いか。
幻想郷の均衡を守るために、彼を失う覚悟をするのか。
それとも――世界を歪ませてでも、彼を残すのか。
そして物語は、やがて一つの答えへと辿り着く。
「存在とは何か」
「記憶とは何か」
「愛とは何か」
歪んだ世界の中で、それでもなお刻まれる“名前”の意味。
それは消えるためのものか。
それとも、残るための証か。
これは――
存在を失いかけた一人の少年と、
彼を巡る幻想郷の少女たちが紡ぐ、
儚くも美しい、歪みの物語である。