あらすじ
外的刺激に過敏な三十代既婚女性。
音や気配に追い詰められる日常の中で、彼女は自らが「憑かれている」と確信する。
墓参りの帰り、限界を迎えた彼女は夫に連れられ、拝み屋のもとを訪れる。
しかしそこで告げられたのは、「憑き物ではない」「中が空だ」という異様な診断だった。
その瞬間、彼女の内側で“何か”が開く。
身体の奥から溢れ出す黒い存在。
崩壊する自己と、乗っ取られていく肉体。
それは憑依ではなく、置換でもない。
“複製”だった。
やがて日常へと戻ったかに見える生活の中で、
静かに、確実に――次の「開口部」が選ばれる。
三月の湿った風が吹くたびに、増えていくものがある。