あらすじ
山間の小さな集落で暮らす植村は、妻・裕美子との冷え切った結婚生活の中で、孤独な日々を送っていた。
そんなある日、東京で開かれていたフェルメールの名画「真珠の耳飾りの少女」の展覧会を訪れた彼は、若い女性・つばきと出会う。
奔放でどこか影を抱えたつばきに、植村は激しく惹かれていく。
二人の関係はやがて深まり、つばきは植村の子を身ごもる。しかしその事実は、植村の家庭と集落の静かな日常を大きく揺るがすことになる。
周囲の視線、壊れていく家庭、そして自分の居場所――。
葛藤の末につばきは娘・朱音を残し、ある日突然姿を消した。
それから十二年。
植村は父であることを隠し、祖父「じいじ」として朱音を育てていた。絵を描くことが好きな朱音は、母が残した一枚の絵――フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」を宝物のように大切にしている。
やがてその絵が大阪で公開されることを知り、二人は展覧会を訪れる。
だが、その美術館で思いもよらぬ再会が待っていた。
長い年月を経て、母と娘、そして男の想いが静かに交差する。
愛とは何か。
赦しとは何か。
人は誰のために生きるのか。
一枚の絵が結んだ三人の運命を描く、静かな再生の物語。