あらすじ
昭和二十四年七月、初代国鉄総裁・下山定則が常磐線の線路上で轢死体となって発見された。
自殺か、他殺か——捜査は迷宮入りし、七十年以上経った今も真相は闇の中にある。
事件から約二十年後、一人のフリーライターが関係者を訪ね歩いた。
国鉄職員、新聞記者、解剖医、GHQ元将校、刑事、調査室職員——そして、記録に存在しない男。
誰も嘘をついていない。
誰も本当のことを言っていない。
ある者は止めなかった。
ある者は数字だけを書いた。
ある者は「整理された」と言った。
その沈黙の総体が——一人の死を、閉じた。
最後に発見された写真の裏に、一行だけ書かれていた。
「頼んだのは、私だ」