あらすじ
核戦争で荒廃した世界。
復興後、主要各国を常任理事とした国際連合は、和平への道を採択。
手に手を取り合い、国境なき世界を目指そうとしていた。表向きは。
大陸中央部に位置する小国、ヤマ共和国。
かつて、国際社会から孤立していた、軍事独裁国家である。
遡ること、5年前。
共和国内で大きな武力衝突が起きた。
国境を接する南方の大国、パンナー連邦との、ちょっとした諍いである。
それから、5年。
パンナー連邦、南部の田舎町。ガルダ。
歴史情緒の溢れる観光地では、最も有名なレストランである『マカラ』において。
個室を貸し切り、今、まさに、宴が開かれようとしていた。
しかし、主賓席に主役の姿はない。
かつて仲間として共和国内を旅した、ユウリン、クロー、スコープたちは。
空席に目をやりながら、今宵の宴を一区切りとして、5年前の出来事を語り始める。
それぞれの視点から明かされる、それぞれの思い。
しかし。
3人の思い出の中心に居たのは、主賓席に座るはずだった少年、ハクトの姿だった。
クローから見れば、気弱で頼りなく。
スコープから見れば、純粋で真っ直ぐ。
ユウリンから見れば、繊細で危なっかしい。
3者3様の思いが交錯する中。
宴もたけなわに近づいたころ。
貸し切りの個室のドアがノックされるのだった。
5年前。
ヤマ共和国の北西部、イドラ地区が消滅した大事件が、すべての始まりだった。
調査のため、現地に派遣されたのは、先の戦争の英雄であるユウリン少佐と、付き人のクロー。
瓦礫も残らず消し飛んだ町を確認したふたりは、爆心地と見られるクレーターの底で、呆然と座り込む無傷の少年を見つける。
この少年こそが。
共和国内で秘密裏に開発された、クローン人間の生体兵器、史上最強クラスと言われる軍神であり。
ユウリン、クロー、スコープの中心的存在となる、ハクトだった。
それぞれの抱える過去が今となり、世界の明日へ紡がれていく。
そして、宴は終わった。
主賓席に座るはずだった少年、ハクトの安否は。
偶然の出逢いから絆を得た、仲間たちの思いとは。
5年前の真相とは。
SF×群像劇が、宴と共に、幕を開ける。