あらすじ
「お前のことは最初から好きではなかった」 五年間尽くした婚約者にそう告げられた夜、 リゼットは王太子の記憶から自分を消した。
一生に一度だけ使える秘術。 対象は王太子ただ一人のはずだった。 なのに王都では次々と人が記憶を失い始める。
全てを捨てて辿り着いた地方の療養院で、 リゼットは記憶を失った患者たちの世話をしながら 静かに暮らしていた。
ある日、新しい患者が運ばれてくる。 原因不明の記憶障害を抱えた青年。 幼馴染のレオンだった。
彼はリゼットの名前も顔も覚えていない。 それなのに彼の手は白鈴蘭の花を摘み、 彼の唇は眠りの中でリゼットの名を呼ぶ。
消したはずの記憶が身体の奥に残っている。 忘れさせた側が記憶を取り戻す手伝いをする。 その矛盾に気づいているのは、リゼットだけ。
一方、王都では記憶を失った王太子が 理由もわからず夜ごと泣いているという。
忘れてもなお残るものは、愛と呼んでいいのか。