あらすじ
かつて一万の部下を死なせ、公式記録上「処刑」された元帝国総司令官、リズ。
地下深き「遺品編纂室」に幽閉された彼女の任務は、歴史から消されるべき大罪人たちの遺品を整理し、その「悪」を確定させることだった。
ある日、リズの手元に届いたのは、二年前に民衆の手で断頭台へ送られた「稀代の悪女」エリシアの記録。
贅を尽くし、領民を虐げたとされる彼女の遺品を手に取ったリズは、その裏側に刻まれた「異常なまでの孤独」と「血の滲むような合理性」に気づき始める。
毒を恐れ、自ら皿を傷つけながら孤独に食事をした形跡。
冷酷な技術指導によって、飢える領民に「自立」を刻み込んだ鞭の跡。
リズは編纂官として、公的な歴史には彼女を「悪」と断じつつ、自分だけが知る秘匿手帳に、真実の祈りを綴っていく。それは、死んだはずの部下たちとの対峙であり、自らの罪を編み直す旅でもあった。
歴史という名の巨大な嘘を守るために、孤独な二人の「死者」が交錯する、鎮魂のファンタジー。