あらすじ
琥珀は寺の娘として、ごく普通に生きてきたはずだった。
見えないものは見えないし、感じないものは感じない。少なくとも、そう思っていた。
――あの日までは。
転校生として現れた男・雨辻由良。
彼と出会った瞬間、左手にはめられていた指輪が熱を帯びる。
そして告げられる。
お前は〝花嫁〟だ、と。
それは、特別な力を持つ少女を巡り、複数の異能者たちが奪い合う“制度”。
守られる存在でありながら、同時に奪われる存在。選ばれるだけの立場。
意味が分からない。納得もできない。
けれど現実は、容赦なく琥珀の日常を壊していく。
次々と現れる“花嫁”を求める男たち。
護衛と称して距離を詰めてくる由良。
そして、隠されていた父の秘密と、指輪に封じられた力。
守られるだけの存在でいるには、この世界はあまりにも理不尽だった。
奪われるくらいなら、抗う。
選ばれるだけなら、拒む。
やがて訪れる成人の儀。
その裏で動き出す争奪戦は、琥珀からすべてを奪い、そして突きつける。
――お前は、誰に選ばれるのか。
その問いに、琥珀は首を振る。
選ばれるなんて、ごめんだ。
だから――
私は、私で選ぶ。
〝花嫁〟としてではなく、一人の人間として。
その運命ごと、壊すために。
これは、望まないまま〝花嫁〟に選ばれてしまった少女が、すべてを奪いに来る男たちに抗いながら、自分の未来を選び取る物語。