あらすじ
「これ、お母さんの借用書やで」
入院中の母に代わって喫茶店を一人で切り盛りする桜坂夢乃(ゆめの)の前に現れたのは、ガラの悪い取り立て屋。突きつけられたのは八百万円の借金というあまりに無慈悲な現実だった。
心臓を患っている志乃には決して相談できない。自分一人の稼ぎでは、逆立ちしても返せない。
絶望に震える夢乃に手を差し伸べたのは、店の常連客で、柔らかな関西弁を操る謎めいた男・桐生総司だった。
「自分、またそんな顔して。俺がどうにかしたるから、安心しい」
その言葉通り、彼はたった一日で、悪夢のような男たちを追い払ってみせる。
安堵し、涙する夢乃。しかし、彼が微笑みながら口にした「解決」の形は、夢乃の想像を遥かに超えるものだった。
「借り換え? いや、それはもっとちゃうかもしれんな」
全額返済の代償として、総司が求めるものとは。
救世主か、あるいは静かな支配者か。
香ばしいカレーの匂いと、冷めかけたコーヒーの香りが漂う店内で、二人の歪で濃密な「契約」が幕を開ける――。