あらすじ
五年前、『暁の銀百合』と呼ばれた令嬢・雫は、婚約者の裏切りと公爵家の策略によって社交界から姿を消した。
今は深夜営業の喫茶『月灯り』で、ひっそりと働く日々。帰る場所のない人々に寄り添いながら、静かに生きてきた。
そんな店に、奇妙な常連客が現れる。閉店間際に訪れ、何も注文せず、ただ窓際の席で雫を見つめる青年。その深い碧眼には、切実な何かが宿っていた。
彼の正体は——かつて雫を陥れた公爵家の次男・蓮司。
「五年前、誰にも気づかれなかった貴女の涙を、僕だけが見ていました」
兄の罪を知らず、ただ一途に雫を探し続けていた彼は、偶然この店のコーヒーと再会する。あの夜、月明かりの下で香った、忘れられない一杯と。
復讐か、赦しか。過去に囚われた令嬢と、家の罪を背負う青年。
深夜二時の喫茶店で紡がれる、切なくも温かいラブストーリー。