あらすじ
病室で終わるはずだった人生は、気づけば北境の要塞で続いていた。
名前も持たず拾われた少女――セラフィナ。
彼女を保護したのは、無表情で冷徹と恐れられる騎士団長ヴァイスだった。
けれどその男は、誰よりも丁寧に彼女を扱い、
誰よりも確実に「安全な場所」を与えてくる。
歩くことも、笑うことも、誰かと食事をすることも。
当たり前だったはずのすべてを、ひとつずつ取り戻していく日々。
しかしそこは、戦場の最前線。
石壁の外では、いつも命のやり取りが続いている。
守られているだけでいい――はずだった。
そうしていれば、もう傷つかずに済むはずだった。
それでも。
朝の鐘の音も、厨房の匂いも、
不器用に笑う人たちも、無口な団長の背中も。
この場所で知ってしまった“あたりまえ”を、失いたくないと思ってしまった。
だから少女は、初めて願う。
ただ生きるためではなく、
この場所を守るために。