あらすじ
平凡な日常を生きる五十代の男。
変わり映えのしない朝、いつも通り駅へ向かう途中――その“当たり前”は突然、終わる。
信号を渡ろうとした瞬間、彼の左目に一本の刀が突き刺さる。
しかし血も痛みもなく、周囲の誰も異変に気づかない。
そしてその刀は語りかけてくる――自らを「わらわ」と名乗り、男に選択を迫る。
「このまま朽ちるか、それとも“人格”を渡して、もう一度生きるか」
提示された条件はただ一つ。
人の内に潜む「108の煩悩」を斬ること。
戸惑う間もなく、男は“欲望”に飲み込まれた怪物と遭遇する。
刀に人格の一部を差し出すことで若返り、圧倒的な力を得て怪物を斬るが、その代償として“自分の何か”が削られていく。
やがて彼は気づく。
この戦いは単なる怪物退治ではなく、自分自身の内面を切り捨てていく行為であることに。
嫉妬を斬れば嫉妬の感情を失い、戦うほどに人間らしさが薄れていく。
それでも目の前で誰かが奪われるのを見過ごせず、彼は戦いを続ける。
日常と非日常の狭間で、
「守るために自分を失うのか」
それとも「自分を保つために見捨てるのか」――
葛藤を抱えながら、男は刀とともに“108の煩悩”との戦いへ踏み出していく。
これは、
人生に絶望した男が、他者を救いながら自分を削り続ける再生と喪失の物語。