あらすじ
体育館の端で、ひとり残って踊る子がいた。 呼吸が浅い。吸いきる前に次の動きへ入る。それだけが、やけにはっきり見えた。
高校三年のハルカには、人のほころびが見える。列のずれを半歩で直し、足を痛めた後輩に湿布を渡す。誰かを整えているあいだだけ、自分の立ち位置がはっきりする。
文化祭二週間前、二年の転入生・星莉が部に加わる。踊れる子だった。でも人の目があると、身体がどんどん閉じていく。
ハルカは気づかないまま、星莉の呼吸ばかり目で追っている。 そして踏み込みすぎる。
——伸ばした腕の長さを、可動域と呼ぶ。