あらすじ
長年独り身を貫いてきた30代のナリスは、姉であるエリス公爵夫人の屋敷へ顔を出すたび、密かに肩身の狭い思いと複雑な感情を抱えていた。なぜなら、義兄のハワレルは、ナリスが学生時代に密かに恋心を寄せていた相手だったからだ。
貧乏貴族として入学した学園で、誰に対しても分け隔てなく優しいハワレルに惹かれていたナリス。しかし、公爵家の義母の思惑もあり、彼と婚約したのは要領が良く野心家の姉・エリスだった。初恋を姉に奪われる形となったものの、ナリスは自身の気持ちを封じ込め、自立の道を歩みながら姉夫婦を見守ってきた。
順調に見えた姉夫婦だったが、義母の死をきっかけに姉が精神的に不安定になり、ハワレルに辛く当たるようになる。追い詰められたハワレルから助けを求められたナリスは、彼の双子の弟・ルヴェルを身代わりに立てる奇策「替え玉作戦」を提案し、共犯者として夫婦の危機を影から支えることになった。
それから年月が経ち、平穏を取り戻した現在。ナリスが屋敷を訪れる日は、なぜかハワレル本人が必ず応接間で待ち受け、二人の思い出の品である「モンブラン」を用意して出迎えてくれる。
いつまで経っても結婚できないのは、この優しくて罪作りな義兄のせいだと密かに毒づきながら、ナリスは今日も不器用で愛おしい日常を過ごしていく。