あらすじ
「可愛げのない女だ」と切り捨てた王子の本音は『一生こき使える馬車馬ゲット』。
聖女の本音は『横領してイリスに罪を被せて処刑』。
聞こえてますよ、全部。――では喜んで、証拠を集めます。
夜会の席で、第一王子カイルはイリスに言い放った。
「可愛げのない女だ。愛など不要、ただ事務だけこなせ――契約結婚だ」
その瞬間、イリスには聞こえてしまった。王子の本音が。
《ちょろい。少し信頼してみせれば、こいつは一生俺のために働く馬車馬になる》
聖女の本音も聞こえた。
《横領した予算はイリスに被せて処刑。計画通り》
――なるほど。状況、完全に把握しました。
喜んでお受けします、契約結婚。
口出し無用でやらせていただくので、あとで全部ひっくり返しますね。
一方、隣国から静かにこちらを観察していた公爵・ゼノスは初対面でつぶやいた。
《腹黒い。有能で、腹黒くて、美しい。あのバカ王子に使いこなせるはずがない》
これは、心の声が筒抜けの契約妃が、笑顔で証拠を積み上げ、
鮮やかに「馬鹿な皆様」を置いて隣国へ去るまでの、一年間の記録です。