あらすじ
「卵を温めるしか能がない役立たず」と断罪され、悪役令嬢の汚名まで着せられたエレノアは、王都から雪深い辺境へ追放されます。けれど彼女のスキルは、ただ卵を温めるだけではありませんでした。魔力の温度を見極め、孵化の時期を揃え、弱い雛を落とさず群れとして育てる力は、冬になると食糧も家畜も足りなくなる開拓村でこそ真価を発揮します。エレノアは村人たちと保温槽を作り、卵と雛を増やし、肉・羽毛・運搬用の家禽まで回る小さな生産圏を育て、誰が欠けても続く手順まで村へ残していきます。やがて吹雪で補給路が閉ざされ、村が飢えかけた夜、彼女の群れだけが村人たちを繋ぎ止めました。いまさら王都が「本当は有用な技能だった」と気づいても、彼女が受け取るのは呼び戻しではありません。辺境で育った土地と暮らしそのものが、彼女の報酬になる物語です。