あらすじ
明治時代初期、文明開化の波に乗って様々な文物が海外から舶来した。根岸で室町時代から続く商家として財を築いてきた式見家の当主式見愛継は、山手や根岸の居留地に住まう外国人との交流で存在を知った魔術に興味を抱き、やがて集めた魔術書を貸し出す魔術文庫を始めた。時代が下るとともに人々は魔術への興味を失い、魔術文庫を頼る人も少なくなったが、関東大震災や太平洋戦争といった歴史的大事件を経てもなお、魔術と魔術師はその存在を現代に伝え続けている。
初代愛継から数えて六代目の書物守に当たる夏生は、魔術師の道標として歴代の書物守と同じく務めを果たす。心配は自身に残された時間の少なさと、息子たちのことであった。
第一話 傷心旅行と新米魔術師
北海道稚内市から大学へ通うために出てきた久澄揺恵は、魔術師として名を挙げるための成果物を探して式見文庫を訪れる。『聖フランチェスコの呼び寄せ袋』を夏生に示された揺恵は、彼の息子の舜吾と共に材料を探して中華街を歩き成果物を完成させるが、実験の結果見ず知らずの人を呼び出してしまう。
第二話 青の指には黄色の土を
野毛山公園の近くに住む魔術師の弓削涼子は、勤め先の喫茶店で最近無銭飲食が相次いでいるという話を聞く。その現場に遭遇した涼子は犯人を追い詰めるが逃げられる。使い魔のランディは犯人からある違和感を覚えたと訴え、涼子はその正体を知るために式見文庫を訪れる。
第三話 願わくは面影を抱くように
六代目書物守夏生の息子である舜吾は、魔術とは距離を置いた日常を送ってきた。魔術を支えることに命を賭すかのような父親を心配しつつも、どうしようもできない自分にもどかしさを感じていた日々の中、覚悟していた瞬間が訪れる。
第四話 そしてその手にできること
保護者役を急遽引き受けることになった火野と三者面談に臨む舜吾は、周りに流されるように大学進学を選ぶ。父親のような書物守になる自信は持てず、諸岡をはじめとする魔術に関係する人々の手によって蔵書が散逸していくのを見つめるしかできなかった。その折、暇乞いをした佳菜の秘密を舜吾は知る。それは両親の離婚の真相、夏生と火野が式見文庫と魔術を守ろうとした真意に関する事実であった。