あらすじ
天上の完成を捨て、地上の「物語」を語ることを望んだ罰か。
彼女は**神の器としての役割(一翼)**を無惨にもがれ、地上へと叩き落とされた。
背中に刻まれたのは、神に引き裂かれた消えない「翼の痕」。
だが地上に降りてなお、彼女は傷つくことさえ叶わぬ、不可侵なる超越者のままだった。
幾百の年月、彼女はただ世界を観測する「語り部」として歩み続ける。
幾億の人と出会い、話し、時に触れ、積み重なる物語の重さを受け入れたとき――彼女の器は変質を始めた。
地上の太陽に焼かれた、褐色の肌。
大地を力強く踏みしめ、生を実感させる肉感的な下半身。
そして、自ら差し出し、初めて刻まれた「脚の傷」。
不可侵の殻を脱ぎ捨て、生々しく美しい「人間」へと堕ちていくことで、彼女はようやく地上の物語の「当事者」となった。
やがて彼女は、王都の地下――腐敗した死臭が満ちる儀式の場で、一人の少女と出会う。
背中に彼女の残骸である「白羽」を縫い付けられ、尊厳を蹂躙された生贄。
癒やしの奇跡を持たぬ彼女が、死にゆく少女に与えたのは、慈悲ではない。
自らの血を分け与え、安らかな死さえ奪う、不変の呪いだった。
「さあ、立ちなさい。怪物でも、紛い物でもいい。……あなたの絶望が、いつか美しい韻を踏むまで」
これは、自ら傷つくことを選んだ「語り部」と、人間に壊され「怪物」へと再構成された少女が、呪いと共に歩む、静かで凄惨な逃避行の記録。