あらすじ
愛のない妻だと噂されるセレナは、夫ルシアンの実家に金を吸われ続ける伯爵家を守るため、感情より帳簿を優先してきました。祝い事を減らし、使用人の補充を止め、義母と義弟への送金に上限を付けるたび、彼女は「冷たい女」と嫌われます。肝心のルシアンまで、彼女が自分にも家にも関心を失ったのだと思い込み、ついに離縁を口にしかけます。けれどセレナが静かに差し出した帳簿には、彼女の持参金、宝飾品の売却額、未払いだった小作料の補填、義実家が開けた穴を塞ぐための細かな工面がすべて残されていました。家を守っていたのは冷酷さではなく、彼女ひとりの防波堤だったのです。帳簿を読んだルシアンは初めて妻の孤独を知り、実家との金の流れを断ち切る決断を下します。全員の前でではなく、夫だけが先に真実へたどり着く、低温の結婚修復譚です。