あらすじ
高岡健二は京都から故郷米子への特急列車の中で急性盲腸炎の激痛に襲われて動けなくなった。助けてくれたのは隣席に座った黒いサングラスをかけた危険な匂いの二十代半ばの女性だった。彼女の住所は京都市内で名前は揚羽蝶という変な名前だった。
「DXミュージック、踊り子興業、揚羽蝶来演!十八歳未満入場お断り」
揚羽蝶はストリップのヌードダンサーだったのか・・・
健二は生命を救われたお礼の言葉と感謝の気持を伝える為に直ぐに観に行った。
彼女の白い下腹に蝶が飛んでいた。彼女が脚を開いたり、閉じたり上げたりする度に蝶は華麗に舞い飛んだ。
「あんた、独り暮らしよね。今夜だけで良いからあたしを匿ってよ、ね」
彼女の声にも動作にも有無を言わせぬ切迫感があった。
「ただで泊めて貰うんだもの、お返しをしなきゃ、ね」
ブラジャーを外し、ロングスカートとパンティを一緒に脱ぎ下した彼女に、健二は伸し掛かって行った。
合体の後、健二はストリップの話を聴いた。踊るメンバー、公演回数、ギャラ、ライブの高揚感、スト女の出現、踊る解放感や緊張感や醍醐味、全国興業と人気ランキング、公然ワイセツ罪での逮捕、勝手に辞められないヤクザが取り仕切る世界などなど、彼女はあっけらかんと話したが、それは凄絶で凄惨なものだった。
十年後、健二はファッション・デザイナーに変身した彼女と再会したが、その下腹部に揚羽蝶は舞っていなかった。跡形も無く消えていた。
手術をして揚羽蝶を葬り去ったのか・・・
更に二か月後
「元ストリップの女王、揚羽蝶、自死!」
小さな記事だった。
何が在ったんだ?何故死んだんだ?・・・彼女は揚羽蝶の世界から解き放たれることはなかったのか・・・
健二の脳裏に、ライトを浴びて白い肌に華麗に舞う揚羽蝶の姿が鮮やかに蘇えった。そして、その姿は、終生、彼の胸に焼き付いた。