あらすじ
婚約者の心変わりを悟った侯爵令嬢リディアは、無惨に捨てられる前に自ら王都を去り、辺境へ逃げた。
逃げ込んだ先で出会ったのは、王都から馬車で四日離れた地を治める若き領主・ヴィルヘルム。挨拶以外ほとんど口を利かない、氷のように無愛想な男だった。
静かな辺境で心穏やかに暮らそうとしていたリディアだが、成り行きで朝の台所に立つようになる。すると、なぜかヴィルヘルムまで無言で手伝いに来るように。卵を割ることから始まった奇妙な朝の時間は、いつしか彼女の傷ついた心を少しずつ溶かしていった。
けれど、その優しさに縋ってしまうのが怖くて、リディアはある朝を境に台所へ行くのをやめてしまう。
――それなのに翌朝からも、彼女の好みに寸分違わぬ完璧な朝食が、毎日届き続けた。
挨拶すらろくにしない不器用な領主様が、ひそかに仕込んでいたのは、重たすぎるほど一途な愛情だったのです。
一方その頃、リディアの“地味で役立たず”と笑われていた力を失った王都は疲弊し、今さら彼女を呼び戻そうとする。だが、そんな身勝手な申し出を、リディアは最高の笑顔で一蹴した。
「王都の豪華な朝食より、こちらの朝食の方がずっと美味しいので、お断りします」
これは、傷ついた令嬢が辺境で本当のぬくもりに出会い、無口で不器用な領主様の過保護な溺愛に包まれながら、幸せを掴み取る物語。