あらすじ
「誰かと同じ経験をしたい、そういう体験をしてもっと周りの事をよくわかるようになりたい、そう思って普通は映画や小説を手に取るよね。同一化の願望を秘めて、経験を裁断している、そう出来る、それが俺らなのかなって」
「ノンフィクションは?」
宗一郎はそう言う。
「それは、剥き出しで置いてある経験」
かなこは幼少時から性的虐待を受けて育ったせいで、周りの人のことを敵視するのを辞めない。普段は押し留めているものが現実に現れる時に、たびたびショック反応で記憶を失くす。そのせいでかなこはバラバラの記憶を持った大人になり、何故か、より男と深い関わりを求める為に夜の店で働き始める。
宗一郎は私の書いたものを読んだ後は眉を顰めて、それから少しだけ無口になった。部室では顧問の先生やら他の生徒達から私が褒められている間、何か居場所を無くした子供みたいな顔でこっちを見ていた気がした。