あらすじ
自身の宇宙論を証明するため、実験中にマイクロブラックホールへ身を投げた天才物理学者、湯川連。
事象の地平線を越えて彼が辿り着いたのは、物理法則の甘い、あまりに「だらしない」異世界だった。
「レイ・カルツア」として新たに生を受けた彼の目的は魔王討伐でもスローライフでもない。
異世界の現象を物理学で再定義し、巨大な粒子加速器を建造すること。
全ては、事象の地平線を越えて、地球の学会へ「論文」を叩きつけるために。
「査読なき真理は妄想と同じ。地球の受理を以て、僕の存在を証明する」
火球魔法を「断熱圧縮」でプラズマ化し、鉄壁の結界は「共振現象」で粉砕。
物理無効のスライムは「ダイラタンシー流体」として処理する。
神の奇跡たる魔法を前にしても、彼はただ眼鏡を押し上げて言い放つ。
「Q.E.D.(証明終了)。この世界の魔法は、ただの量子力学的な現象に過ぎない」
そんな徹頭徹尾の合理主義者であるレイ。
彼は加速器建造の労働力と頭脳を確保するために入学したヒルベルト魔導学院において、少しずつ心境を変化させていく。
非合理の塊のような仲間たちとの出会いは、彼に「情熱という科学的根拠に欠ける熱量も、悪くないものだ」と思わせるようになっていた。
しかし、神のみが決定する未来を量子論的な不確定性で乱すレイの実験は、神の奇跡を唯一の正義とする教団の逆鱗に触れる。
異端者を排除すべく聖戦を掲げる教団が押し寄せる中、レイは史上最大の重力波実験「オペレーション・グラビティ・ウェーブ」を始動させる。
【免責事項】
この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。また作中の物理学的な解釈は、実際の現代物理学を基本としてファンタジー要素を取り入れた作者の空想になります。