あらすじ

「ねえ、今日も遅いの?」
返信は、既読だけだった。
陽菜は笑顔が得意な女だった。嬉しいときは声に出して笑って、悲しいときは素直に泣いた。そういう自分が好きだった。
でも蓮の前では、いつからか言葉が出なくなった。
仕事一辺倒の夫を責めたかった。待ちくたびれたと泣きたかった。それでも言えなかった。言ったら、壊れる気がした。
五年間、声を飲み込み続けた。
笑顔で送り出して、一人で夕食を食べて、眠れない夜をやり過ごした。蓮は悪い人じゃない。ただ、私を見ていなかった。
それだけのことが、五年分積み重なった。
離婚届をテーブルに置いて、陽菜は家を出た。声に出せなかった五年分の気持ちを、一緒に置いて。
ドアが閉まった音を聞いて、蓮は初めて立ち上がった。

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アルファポリス
アルファポリス2026/03/20
  • 現在の作品「声に出せなかった五年分の気持ちを、離婚届と一緒に置いていきます」