あらすじ
寂れた動物園で、恋に傷ついた大学生が不器用な飼育員と出会い、仕事と恋の両方を知っていく青春恋愛小説。
動物園飼育員(25)×大学生(18)。
大学入学直後、伊加惟人(いがゆいと)は、元恋人に「カレシが出来たから別れよう」と軽く振られた。
しかもその相手のカレシは――ヤギだった。
泣きついた兄のバーで出会ったのは、地元にひっそり残る寂れた動物園「こもれびふれあいランド」の飼育員、八木拓弥(やぎたくや)。
「動物は癒されるよ」と誘われて行った動物園は、来園者も少なく、設備も古い。
それでも園内には、動物たちを大切に世話し続ける人の手の温度が残っている。
だが、その穏やかな空気の裏では、経営の先行きや人員の不足など、このままでは続けていくことさえ難しいという切実な現実が静かに積み重なっていた。
惟人はそこでアルバイトを始め、持ち前の素直さと行動力を武器に、SNS運用や売店改善、餌やり体験の企画など、来園者を増やすための工夫に夢中になっていく。
自分の提案が少しずつ形になり、客の笑顔や動物園の変化として返ってくる日々は、惟人にとっては「癒し」と「誰かの役に立てている」と実感できる時間だった。
外から来た惟人の率直さは、停滞しかけていた園の空気や人間関係にも小さな変化をもたらし、惟人自身もまた、そこを自分の居場所のように感じ始めていく。
一方で大学では、無責任な元恋人や身勝手な同級生たちに振り回され、惟人は人との距離感や信頼の難しさを思い知る。
だからこそ、言葉は少なくても、見守り信頼して支えてくれる八木の存在が胸に沁みていく。
惟人が惹かれていくのは、そのやさしさだけではない。
目立たない雑務も、汚れる仕事も当然のように引き受け、動物にも人にも不器用な誠実さで向き合う八木の姿には、惟人がこれまで出会ってこなかった確かな大人の重みがあった。
しかし八木もまた、家庭や仕事を一人で背負い込み、自分のことを後回しにして生きている人間だった。
惟人は惹かれるほどに、彼の内側に踏み込んでいいのか迷い始める。
八木にとってもまた、まっすぐで人懐こく、園にも自分にも躊躇なく踏み込んでくる惟人の存在は、止まりかけていた時間を静かに動かしていくものになっていく。
支えられるだけではなく、自分もまた八木や動物園を支える側になりたいという惟人の思いは、やがて惟人の中で、仕事への責任と恋心を切り離せないものへと変えていくのだった。
恋に傷ついた十八歳の青年が、小さな動物園で働く人々と出会い、労働の現実、誰かを支える喜び、自分の感情に責任を持つことを知っていく成長譚。
ヤギやアルパカたちに振り回される賑やかな日常、地方の小さな動物園を立て直していく手応え、そして不器用な二人の距離が少しずつ縮まっていく過程を描く、青春お仕事×恋愛小説である。
【作品情報】
全23話完結予定/毎日7時・19時更新
※ハッピーエンド
※カプ固定/主人公受