あらすじ

地方役所に勤める中年公務員景司は、同僚から「鱶のような大あくびの男」と呼ばれていた。周囲の職員が忙しく働く中で、彼だけは仕事もなく、窓際の席でぼんやりしている。無能とまでは言われないが、業務を任せればかえって支障が出る、そんな評価の男だった。 ある日、景司は山中にある古い町営保養所の調査を任される。そこには、長年ひとりで建物を守る老人・佐伯が住んでいた。保養所は民間会社に売却され、近く取り壊される予定だった。 しかし景司は、建物がまだ十分使えること、温泉も修理すれば活用できることを静かに報告書に書き記す。その一枚の書類が役所の中で思わぬ波紋を呼び、観光資源として保養所を残す案が浮上する。 結局、建物は保存され、老人は見守り役として住み続けることになる。 忙しそうな世界の中で、何もしていないように見えた景司の「壊さない仕事」が、ひとつの場所と人の暮らしを守ったのだった。

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エブリスタ2026/03/13
  • 現在の作品鱶のような大あくびの景司