あらすじ
三十四歳、無職。うつ病療養のため実家に帰省中の紗希は、虚しさだけを抱えて日々を過ごしていた。
生きる意味も実感も見失い、ただ時間だけが流れていく。
そんな三月の寒い朝、庭の生垣の向こうに「あり得ない高さの白い女」を目にする。
それは、都市伝説――八尺様だった。
夜、二階の窓を叩く音。
風に紛れて届く「ポポ」という声。
確実に“こちらを見ている”気配。
逃げ場のない状況の中で、紗希は思わず口にする。
「私の中、空っぽだから」
すると怪異は――彼女を連れていかなかった。
恐怖よりも深く残ったのは、「選ばれなかった理由」だった。
これは、何も持たない人間と、何かを奪う存在がすれ違った、静かな物語。